会社から、標準報酬月額が決定されたと通知がきました。
通知された金額は、基本給や給与の額面と違うのでが、これは何の金額でしょうか? また、健康保険料や厚生年金保険料が先月とくらべると高くなっています。どうやって金額が決まるのでしょうか?
こんな疑問にお答えします。
- 標準報酬月額とは何かがわかる
- 毎月給与から引かれている保険料の決まり方がわかる
- 注意すれば保険料は上がらないポイントがわかる
この記事を書いている私は、人事部で6年間勤務しています。
従業員の社会保険や給与計算は、グループ会社3社と従業員は合計で400人の方を担当しております。
毎年、9月~10月ごろに会社から「標準報酬月額決定通知書」が届き、かつ給与明細で社会保険料が高く(低く)なっている人がいるかと思います。
この「標準報酬月額」とはなにか?
そこにフォーカスして説明したいと思います。
標準報酬月額とは?
ざっくり言うと、「あなたの給与(報酬)をもとにした、給与の1ヵ月相当額(標準報酬月額)」です。
この額を一定の等級(階級、クラス)にあてはめて、毎月の保険料の額が計算されます。ここがポイントです。
ちなみに、傷病手当金や出産手当金の給付を行うときにも、この標準報酬月額に基づいて支給される額が計算されます。
標準報酬月額は、以下の4つのパターンで決まります。
①:入社したとき
②:毎年7月(定時決定)
③:給料が大幅に変動したとき(随時改定)
④:その他特例(産休育休明け、定年後の継続雇用時)
それでは、1つずつ説明しますね。
①:入社したとき
まず会社へ入社したときに、
あなたの1か月の給与(基本給+各種手当+通勤手当+1か月あたりの残業代見込み額、等)を元に決めます。
私が給与業務をしているときに感じたのですが、
残業代見込み額も入っていることに驚きませんか?
残業をどれくらいするかわからないのに、その額も含むの?と疑問に思うかもしれませんが、仕方ないです。
通常は、同じ職種や入社歴が近い人を参考に決められる会社が多いですね。
この時に決められた標準報酬月額より算出した保険料は、初任給より引かれる分から反映します。
②:毎年7月(定時決定)
入社の時に1度決めた標準報酬月額は、退職するまで同じではありません。
毎年1回見直しましょう、と定期的に決めなおすことを「定時決定」といいます。
定時決定では、毎年4、5、6月の給与の平均額を元に、7月に決めます。
ここで決められた標準報酬月額は、その年の9月~翌年8月まで同じ額です。
この時に決められた標準報酬月額より算出した保険料は、その年の9月給与より引かれる分から反映します。
③:給料が大幅に変動したとき(随時改定)
会社で長く勤めていると、昇給や転勤による住宅手当などで毎月固定でもらえる給与が変わる時があるかと思います。
または、正社員からパートの時給制になった等も同様です。
給与が大きく上がったり下がったりした場合は見直しましょう、と決めなおすことを「随時改定」といいます。
随時改定では、給与が変わった月から3か月間の平均額を元に決めます。
しかしながら、この随時改定には他にも条件があります。
3か月の平均額を元に、一定の等級(階級、クラス)にあてはめた時、2等級以上変更があった場合に決めなおします。
この時に決められた標準報酬月額より算出した保険料は、給与がかわった月より4か月後の給与から引かれる分から反映します。
④:その他特例(産休育休明け、定年後の継続雇用時)
その他、説明した①~③以外で産休育休明けに復職した場合や、定年後に継続雇用された場合に、給与が下がることが多いです。
保険料が休職前と同じだと、手取りが少なくなってしまいますよね。
そういったことにならない為に見直しましょう、と決めなおします。
この場合も、随時改定と同じく給与が変わった月から3か月間の平均額を元に決めます。
しかし、随時改定との違いは、
3か月の平均額を元に、一定の等級(階級、クラス)にあてはめた時、1等級以上でも変更があった場合に決めなおします。
この時に決められた標準報酬月額より算出した保険料は、給与がかわった月より4か月後の給与から引かれる分から反映します。
定年後の継続雇用とは、一度定年退職し続けて雇用し直す、とする会社が多いです。
この場合は、入社の時と同じ考え方ですね。
毎月給与から引かれている、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料(40歳以上の方のみ)は、説明した「標準報酬月額」に、各保険別にそれぞれの料率をかけて算出します。
健康保険の料率については、あなたが加入されている健康保険組合によって異なります。
しかし、厚生年金の料率は、今まで毎年引き上げられてきましたが、現在では9.15%で固定されています。
あなたの保険料 = あなたの標準報酬月額 × それぞれの料率
例えば、全国健康保険協会の大阪支部を例に見てみると、料率は、健康保険料5.095%、介護保険料0.865%です。
給与が毎月20万円の人の場合、
20万円 × 5.095% = 10,190円 (健康保険料)
20万円 × 9.15% = 18,300円 (厚生年金保険料)
20万円 × 0.865% = 1,730円 (介護保険料)※40歳以上のみ
となります。
このように計算した額が、あなたの毎月のお給与より引かれます。
一度ためしに計算してみてはいかがでしょうか?
保険料が上がらなくするポイント
ここでは、保険料が上がるのが嫌だな、という方に向けて説明します。
会社員の方、同僚同士で「4月~6月はあまり残業しないでおこう」という会話を耳にしたことはありませんか?
保険料が上がらなくするポイントは、まさにこれです。
毎年、多くの企業は4月に昇給がありますよね。
そして、毎年1回の定時決定は、4月~6月の給与を計算して引かれる9月から保険料が反映します。
つまり、一度保険料があがってしまったら、その年の9月から1年間は同じ保険料なのです。
こうならないために、4月~6月は残業を控えておくと、保険料があがらなくなります。
その他、毎月固定ではなくて変動する手当がある方は、それを抑えていただくと保険料を抑えることができます。
この4~6月の残業を抑えた後は、どうぞ好きなだけ残業してください(笑)
といっても、働きすぎは危険です。お体には気を付けてくださいね。
注意点として、会社によって給与の締めや支払い方法が異なりますので、必ず会社へ確認してくださいね。
ちなみに私の会社は、残業代だけ翌月に支給されます。なので、3月の残業代が4月のお給与に反映するのです。
この場合は、 3月の残業を控えるようにしています。
といっても、年度末なので忙しいのですが・・・
[alert title=”注意”]産休中にもらえる「出産手当金」や、けが・病気でお休み中にもらえる「傷病手当金」は、標準報酬月額が元に手当が支給されます。
保険料を気にするあまり、標準報酬月額を抑えてしまうと出産手当金や傷病手当金が思っているより少なくなってしまいます。
出産や入院を控えている方は、逆に残業を気にせずに過ごすのもありですね。[/alert]
まとめ
記事のポイントをまとめます。
- 標準報酬月額とは、自身の給与をもとにした給与の1ヵ月相当額のこと
- 標準報酬月額により、毎月の保険料が決まる
- 4パターンの改定がある
- 保険料率は、加入している健康保険組合によってちがう
- 4~6月の残業を抑えると保険料があがらない(他の手当があれば別)
こんな感じですね。
この記事をご参考に、あなたの標準報酬月額をご確認いただければと思います。
標準報酬月額とは?の疑問は解決しましたか?
少しでもお役に立てると嬉しいです♪
コメント